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・作業に掛かる前に準備しておくことがあります、ハブのオイルシールは使用する前に12時間以上油に浸けておくようにマニュアルに書いてありますので適当な入れ物にエンジンオイルを少量入れてオイルシールを浸けておきます。
・これはシールの材質が革(だと思う)のため十分油をなじませてシール効果を高めるためと思います。 ・昔工業用のエアーシリンダーにジラフ(きりん)の革で作ったカップパッキンと言うのを使ったことがありますが感触とか取り扱い方法がよく似ています、ジラフの革は油が切れて乾燥しているとカチカチなのですが十分浸透すると程良い柔らかさになります。 ・いよいよ作業に掛かります、まず右前輪のハブナットを少し弛めます、右前輪をジャッキアップしボディーをリジッドジャッキ(馬)等で支えます、タイヤハウスに潜り込むので万が一の時のことを考えてしっかり固定して下さい、私はガレージジャッキをフロントのクロスメンバーに掛け2重に支えています。 ・作業手順としてはマニュアルではハブに付いているブレーキディスクを取り外してからハブを取り外すようになっていますが、このボルトはハブが固定されていないため回しにくくまた5本もあるためブレーキキャリパーを外しました。
・ブレーキキャリパーを外すのにショックが邪魔になるのでショックも取り外します。 ・次にブレーキキャリパーを外すためディスクパッドを外します。( ブレーキの手入れ参照) ・ブレーキキャリパーの取付ナットは非常に固く締まっていますので本来ならパイプでハンドルを延長して弛めるべきなのでしょうが私はソケットレンチのハンドルを木ハンマーで叩いて弛めました。 ・基本的にインパクトレンチのように衝撃に対して強く作ってある物以外はハンマーなどで叩くのは良くありませんが位置的に延長パイプが使えない状況でやむを得ず使用しました。 ・キャリパーの固定ボルト2本(内1本はステアリングアームと兼用)、ステアリングアームの固定ボルト1本を弛めたときには取付部にライナー(シムとも言う、薄い鋼板製の板)が入っていることがあるのでしっかりマークしておいて下さい。 ・このライナーは前輪のアライメントに関係がありますので必ず元の位置に”元のライナー”をきっちり戻して下さい。 ・ハブベアリングのダストカバー(一番外の丸いドーム状のキャップ)は隙間に小さなマイナスドライバーの先などを軽くたたき込むことで浮き出てきますので注意深く外します。 ・そうするとハブを止めているハブナットが見えてきます、多分グリースが付いていると思いますのでウエスで清掃しておきます。 ・ハブナットの回り止め用の割りピンはプライヤーなどで挟んで取り外します、一応再使用は不可です、新しい物に替えましょう。 ・ハブナットを弛める前にハブナットと後ろのベアリングワッシャーにマジックインキなどで合いマークを打っておきます、これは後で締め付けるときの参考にしますので忘れないで下さい。 ・ハブナットはちょっと締まっているだけなのですぐに弛みます、ナットを外してハブ全体を慎重に手前に引けばインナー&アウターベアリングとインナー側のオイルシールが付いたままハブが外せます。 ・ハブが取れたのでベアリングの取り外しに掛かりますがバイス(万力)の付いた作業台が無いと作業性が悪いので是非ともバイスを備え付けて下さい。 ・バイスに当て物をして傷が付かないようにしてブレーキディスクを挟み作業を開始します、まずはグリースの掃除から。 ・綺麗になったところでベアリングのアウターレースの後、つまりインナー側のベアリングであればアウター側から、先の平らなフラットポンチかたがねなどで叩き出します。 ・叩く位置はハブ本体に2箇所ベアリングプーラー用の切り欠きが有りベアリングのアウターレースが見えていますのでそこを平等に叩きます。 ・本来ならベアリングプーラーを使うべきでまた使えば作業は簡単なのでしょうが、結構なお値段なので使用頻度から考えるとこの方法で十分でしょう、安く買えれば使うに越したことはありません。 ・ベアリングのアウターレースは割と簡単に取れます、アウター側はアウターレースだけなのですがインナー側はオイルシールも一緒に出てきます、オイルシールには方向がありますので向きを良く確認しておいて下さい、あとはハブの中のグリースを綺麗に清掃します。 ・取り外したベアリングは テーパーローラーベアリングという耐荷重性に優れた物でイギリスのチムケン社の物が付いていました、輸入して取り寄せたベアリングを見て唖然、日本の光洋精工のベアリングでした。 (^^; ・さあ今度はベアリングの取付です、ここも本来ならプレスで押し込むのですがもっと簡単な方法を紹介いたします、コルベット方のホームページ (The Spirits of CORVETTE)でベアリングの取り替えを載せておられましたが私もこの方法を使わせて頂きました。 ・まずベアリングのアウターレースから取付ます、台の上にハブを水平に置くと作業がやりやすいです、アウターレースは向きが有ります、厚い方が中側ですので間違わないようにハブにあてがい、その上から今外した古いアウターレースを載せてハンマーでたたき込みます。 ・ポイントは平行にたたき込むことで、そうでないとアウターレースを傷めたり入らないので挿入寸法をよく見ながら注意深く、少しずつ入れて行きます。 ・最後まではいるとそれまでのコツコツと言った濁った打音がコーンと澄んだ打音がするようになるのでこれで判断します。 ・この時古いアウターレースは厚い方を下に、つまり新しいアウターレースと同じ向きになるようにするのがポイントです、でないと奥まで入ったときに古いアウターレースを叩く所が無く取り出せなくなりますので要注意です。 ・いっぱい奥まで入ったら古いアウターレースのみ取り外します、これをインナー側、アウター側とも行います。 ・いよいよグリースアップです、新品のベアリングでも念のためアウターレースとローラー部分を洗浄してゴミをしっかり落としておいて下さい、ベアリングの表面には窒化(ちっか)という硬化処理がされていますが非常に薄くて一旦ベアリングに傷が付くと一気にダメになる可能性があります。 ・手のひらに親指位のグリースを乗せローラーに押し込むようにして中の隙間にしっかりグリースを押し込みます、ここが不十分ですと後々潤滑不良の原因になる恐れがありますので確実に行って下さい。 ・使用グリースは取りあえずベアリングに付属してきたグリースを使いましたが量が少なくハブの分まではありませんのでハブの中にはシャーシーグリースを使用しました。 ・グリースを付け終わったらハブのアウターレースにもグリースを塗りローラーを挿入します、手で回すと抵抗が大きくて重いですが異常のないことを確認しておきます。 ・その上からオイルシールをたたき込みます、この時にも古いオイルシールをあてがって行います。 ・オイルシールの向きはハブの中のグリースが外に漏れてこないようにシール部分のエッジのテーパーがハブの中を向くようにします。 ・次にアウター側のベアリングのローラーにもグリースを同様に擦り込みます、ハブの内部にもグリースをしっかり補充しておきます。 ・出来上がったハブをハブシャフトに装着しますがハブシャフトの清掃を忘れないで下さい。 ・ハブを奥まで挿入後ハブワッシャーを付けハブナットで締め付けて行きます。 ・ハブを手で回しながらハブナットを締め付けますが、締め付けトルクはトルクレンチで測れるような値ではありません。 ・テーパーベアリングなので必ず押しつけておく必要がありますが押しつけすぎるとベアリングが過負荷になり寿命が短くなります、また緩くてもガタがでてベアリングに局部的な過負荷が掛かります。
・マニュアルによる締め付け方法はハブナットをきつく締め付けた状態から 0.05 〜 0.15 mm ハブナットを浮き上がらせた状態にするようになっています。 ・ディーラーさんで教わった方法はハブナットに 300mm のモンキーを掛けハブを手で回しながら少し重くなったところよりちょっと戻したところと言うことで勘と経験に頼っている部分が多い方法でした。 ・私もそれでやってみたのですが力加減が難しく再現性がありません、ほかの方法で安定したトルクを掛けられる物が無いかと色々探し回った結果自重、寸法などプレート式のトルクレンチがどうかと思い試してみました。 ・このプレート式トルクレンチは柄が適当に長くハブナットに掛けた状態でハブを手で回した時に、自重で水平になる位置が分解前と丁度同じくらいの締め付け位置になるのでこれで代用することにしました。
・この時、分解時にマジックインキで合いマークを打ったところを参考にして下さい、適切な締め付けトルクになるとその近辺になるはずです、私の場合はワッシャーの合いマークの30度ほど手前の位置になりました。
(追加:平成14年2月2日)
・感覚ですが以前と同じようなトルクとなるように締め込んでみたところ約40kg・cmの値でしたのでもう少し締め込んでみるとどうかなと試してみると、どうも100kg・cm辺りがよさそうな感じだったのでしばらくこれで様子を見ることにしています。
(追加:平成15年7月25日)
・その後いったんハブナットを緩めて前記の方法で締め付けます、14年の2月から2万キロ以上走行していますがベアリングのガタもなく良好です。
・この方法でしたら毎回再現性のある同じ締め付けトルクになるものと思われます。
・マニュアルによるとフロントのハブナットは 12,000 マイル( 19,300 Km )毎と結構頻繁に締め付け状態をチェックするようになっています。
・ところで取り外したベアリングの状態ですが、右のフロントのアウター側の小さいベアリングのローターは赤紫色に変色していました、アウターレースの内面の傷はありませんでした。
・インナー側の大きいベアリングはアウターレースとローラーが傷だらけでした。
・インナー側のオイルシールもエッジが軸に馴染んで角が丸くなっています、これも消耗品でベアリングと同時に交換する必要があります。
・左フロントのアウター側の小さいベアリングはゴリゴリいっていました。
・アウターレースやローラーはこれも赤紫色に変色しており、またアウターレースの表面は小さな傷だらけです。
・左は走行時に全く異音を感じなかったのでまさかベアリングが傷んでいるとは思わず、予防保全として右と同時期に替えておこうと思ったのですがこれは結果的に取り替えて正解でした。
・インナー側で主に荷重を受け持ちアウター側は荷重が軽いせいかベアリングが傷んでいても大きな音はしないのでしょうか。
・全般的にローターの変色が多いと言うことは潤滑不足で過熱したものと思われます。
・ハブの構造に問題がありグリースニップルから少々グリースを入れたくらいでは内部の空洞部分に溜まるだけで肝心のベアリングの部分にグリースが届かない構造です。(下図参照)
・おまけに以前に入っていたグリースはカップグリースでかなり固い物のため自然にベアリングの所に流れて行くことは考えられません。
・ハブベアリングのグリースはディーラーさんではシャーシーグリースを使用すると仰っていました、このグリースは少し流動性があるのですがこれでもある程度以上の量を入れておく必要があります。
・一応マニュアルでは(Pack hub with specified grease....)となっていますのでグリースをぎっしり詰めこむと理解すればいいのでしょうか。
・特にカップグリースなど固いグリースの場合メンテの直後はいいでしょうが直ぐに油が切れてくるでしょう、そのためローラーが変色したものと思われます。
・今までは知らぬが仏だったのですが自分でメンテをしているとこういった問題点も見えてくるので、大事な愛車は是非とも自分の手で納得の行く整備をしたいと思います。
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(グリースが溜まっているイメージ) 赤・黄:ベアリング、茶:グリース 紺:ハブケース、水:ハブシャフト 紫:グリースニップル |
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