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【ステアリングラックオイル漏れ修理】
私の車も走行距離が16万キロを超えましたがエンジンをオーバーホールし電装系の接触不良を退治してからは快調に走っておりました。
アイドリングも以前の不整脈が嘘のように静かになり気持ちいい音で回っています、エンジンオーバーホール後は著しく燃費が良くなり一般道や高速など織り交ぜた総平均でジャスト8.0Km/Lの好成績です。
ところがついにやって来ました、パワステのオイル漏れが。
20年以上経つ古い車なのであちらこちらと不具合が出てくるのは当たり前です、パワステも油圧シリンダーからの漏れが少しはありましたが問題になるレベルではなくそのうちにメンテせざるを得なくなるだろうと思っていました。
コントロール弁下側の軸シールが駄目になりシールだけ交換したことがありますがパワーシリンダーからの漏れは今回が初めてです。
誰でも初めての作業は緊張します、私も初めての作業なので不安でしたが横浜のAさんにメンテされた写真やアドバイスを頂いたりタイミング良く千葉のSさんからSer2の日本語マニュアル!を戴き大いに参考にさせていただきました。
日本語マニュアルのイラストには作業手順毎に各パーツに番号が振られて判りやすくなっています、しかしマニュアル記載の年式と私の車の年式が違うので部分的に相違があり少々まごつきましたが手順は大いに参考になり何とか分解できました。
シールその物も材質が変わっていたり、ハンドル側のシールにはインナースリーブが使われていたりと外観からは判らない改良が有りました。
肝心のシールの取付も思うように行かず傷を付けてしまったりしましたが何とか復旧できました。
エンドハウジング(ハンドルの反対側)のリングナットを弛めるのにフックレンチが必要でしたが先端の平らなタガネなどが有れば作業は可能です。
古いシールを取るのに先端がL字型になったSSTが必要になりますがこれも小さなマイナスドライバーを加工すればOKです、それ以外のSSTは必要有りませんので皆さんも是非チャレンジしてみてください。
左右のタイロッドです、ボールジョイントは外さずにネジ部を外しました。
ネジ部には白のペイントを塗り、マジックなどで現在位置をしっかりマークしておきます。
ここを元通りに復旧しないとトーが狂ってきます。
左の写真はハンドルとの連結用ユニバーサルジョイントです。
ハンドルとタイヤが直進状態の時ユニバーサルジョイントとパワステのコントロール弁を止めているボルトはラックと平行位置にあるはずです、もし違えばどこかのセッティングが間違っています。
パワステオイルポンプへの高低圧配管も外します。
サブフレームへの固定ボルト(写真右)も外します、外れた途端落ちてきます、結構重いので注意してください。
取り外したパワステラックです。
作業準備からここまで約1時間仕事です。
コントロール弁の位置を確認します。
左の写真の丸棒を入れているところに小さなメクラプラグがありますがこれを外します。
丸棒を奥まで挿入しラックの中心となる位置に切り欠きが有りますので丸棒を合わせます。
その状態でコントロール弁上部のハンドルとの連結用スプラインの切り込み位置を確認します。
写真のように連結ボルトが入る位置の切り欠きがラックと平行になっていればOKです。
コントロール弁を取り付けている3個のナットを弛めてコントロール弁をゆっくり引き抜きます。
コントロール弁下部の軸シールがボディー側に残りますのでギヤーで傷を付けないように注意してください。
コントロール弁を引き抜くと同時に軸が右の写真のように回ってゆきます、ピニオンギヤーがヘリカルギヤーのためです。
コントロール弁を取り出したところです。
ラックブーツを取り外します。
今回はオイル漏れのため劣化が早かったのか右端の一番細い谷の部分で割れていました。
コントロール弁側のボールジョイントのロックタブを起こします。
今回はロックタブを手配してなかったので再使用するため写真の程度で止めておきます。
一寸判りにくいですが左右のボールジョイントにモンキーを掛け弛めます。
右の写真はボールジョイント部を取り外したところです。
モデルによりボールジョイントの構造が違います、スプリングが入って押しつけるタイプもあります。
私の車はごくシンプルで何もありません、ボール部にガタが有ればアッセンブリーで交換です。
ボールジョイント部の拡大です。
ご覧のように中には何も入っていません。
ボール部もピカピカで綺麗です。
左の写真ですがインナースリーブの固定ボルト?を弛めます。
ラックギヤーのバックラッシュ調整部を取り外します。
左の写真では見にくいですが真ん中にスプリングが入っています、拡大写真でご覧頂くとよく判ります。
右の写真は押さえのプラスチックを取りだしたところです。
ラックギヤーのアールに合わせて作られています。
これでラックギヤーを後からコントロール弁側のピニオンギヤーに押しつけてバックラッシュを無くしています。
エンドハウジング側のリングナットの回り止めを弛めます。
フックレンチでリングナットの切り欠きに合わせて弛めます。
本来ならU字型のフックレンチを使うべきでしょう写真の物しかなかったのでリングナットのネジを傷めないようにネジとの間にアルミ板などを挟んでください。
フックレンチをこのようにセットします。
前にも書いてますがリングナットとツールの間にアルミ板を挟むなどネジ部の養生を忘れないようにしてください。
右の写真のようにラック本体とエンドハウジングを左右に分離できました。
上からコントロール弁、ラックギヤーとエンドハウジング、ラック本体、その右はインナースリーブ、手前の四角いアルミ板はリングナットにフックレンチを掛けたときの養生用です。
ラック本体側に付いているインナースリーブです。
左の写真のインナースリーブですが右端に軸シール部分があります、シールはタブ付きのキャップで押さえてあります。
右の写真は軸シールの反対側、ラックギヤー側のシール部分です。
軸シールは2重構造になっています。
奥の方は平たいシールです。
手前側は段付きのシールです、どちらも特殊なプラスチック製のようです。
右の写真はシール押さえのキャップとシールを取り去ったところです。
シール類の内特に段付きシールを取り外す際は
方向
が有りますので良くチェックしておいてください。
左の写真では手前の青く見えているシールです、同じ物がエンドハウジング側にもあります。
インナースリーブのシール、新旧です。
上の列が旧のシール3個で、右端が押さえのキャップです。
下が新しいシールです。
左端が奥側に入れるシールですが板状になってますので丸く整形します。
切口の仕上げが出来てませんのできっちり合うようにカットしATFを塗って組み付けます。
下の真ん中はOリングです、この内側に右端の段付きシールを押し込みます。
Oリングの弾力で段付きシールを軸に押しつけるような感じになっています。
右の写真はエンドハウジング側のボールジョイントを外したところです。
結構堅く締まっており弛める方法がありません。
結局ラックギヤー部をバイスで挟んで弛めました、バイスに挟むところには傷が付かないようにアルミ板などをあてがってでしっかり養生してください。
エンドハウジング側の内部です。
右側のようなシールが入っています。
左側のシールはインナースリーブのシールと同じですがOリングと段付きシールだけです。
右側はラックケースシール用のOリングです。
ラックギヤー側の養生です、シールをセットする時に傷を付けないようにテープを巻いています、出来るだけ薄い物を使ってください。
ビニールテープなどであれば厚すぎてシールが入りません、私はセロハンテープを使いました。
当初右の写真のインナースリーブにシールをセットして組み付けようとしましたがシールがきつくて入りません。
結局シールを1個を傷だらけにしてしまいました、仕方がないので新しいシールを使いました。
取付方法を変更し軸シールのタブ付き押さえキャップと軸シールを先に通し、後からインナースリーブを入れて合体させました。
シールは事前にラックギヤーのエンドハウジング側が丸いのを利用して軸に馴染ませ、且つ少し斜めにして押し広げて見ました。
その結果ラックギヤー側に上手く入るようになりました。
シールやシャフトにはATFを塗っておきます。
今度は組み立てですが写真が撮れて無くてすみません。
ラックギヤー中央のテフロンシールを取り付けます、オリジナルは斜めにカットした物が入ってました。
テフロンシールにバックスプリングが入っており外周に押しつけるようになっていましたのでこのクリアランスを使って何とかシールを切らずにセットできないかトライしましたが駄目でした。
結局オリジナルと同じように一カ所斜めにカットしたテフロンシールを取付ます。
これらの作業の時摺動部にはATFを注油しておきます。
ラックギヤーをセットしインナースリーブを奥まで押し込みます。
インナースリーブを固定用?ビスで固定します(左写真)。
右は左右のラックブーツ用エアー連絡パイプです、ラックギヤー側を先に差し込んでおきます。
エンドハウジングをラックギヤーのシャフトに通します、シールを傷めないように注意してください。
エンドハウジング側のエアー連絡パイプはエンドハウジングと同時に取り付けます。
パイプの先端を合わせておきエンドハウジング固定用のリングナットを締め付けてゆけばこのパイプも徐々に奥まで挿入されます。
エンドハウジングは向きがあります、右の写真の六角ボルトの先端がガイドになっていてラック本体の切り欠きに嵌め込みます。
その時ラックの取付方向をよく見ておいてください、180度の方向でしか取り付けられないのとエアー連絡パイプの取付位置からまず間違うことはないでしょう。
リングナットをしっかり締め付けた後六角ボルト右側のリングナット固定ビスを締め込みます。
エアー連絡パイプは綺麗に収まりました。
コントロール弁をセットする場合ラックギヤー背面のバックラッシュ調整部から見てセンターマークが中央に来るようにします。
コントロール弁のピニオンギヤーはヘリカルギヤーになっていますので挿入と共に位置がずれてきます、セット後に最初に確認した位置となるようにしてください。
尚この時コントロール弁の下部シールに傷を付けないように注意深く挿入してください。
コントロール弁のハンドルシャフトを動かして左右全ストローク同じ量だけ動くのを確認します。
その後バックラッシュ調整部を取り付けます、スプリングの強さはほどほどでOKです。
バックラッシュ調整部はコントロール弁取付後に行ってください、先に取り付けるとコントロール弁が入りません。
ラックギヤー部とバックラッシュ調整部にはグリースを塗っておいてください。
右の写真は全体を組み上げたところです。
タブ付きのワッシャーの折り曲げやロックナットの締め忘れをチェックします。
車に取り付けます、取り外しの逆をやれば問題はありません。
ただ重くて持ち上げるのが大変です、特にラック取付ボルトをセットするのに泣かされますが頑張ってください。
復旧後パワステオイルポンプにATFを補給しエンジンを掛けてすぐに止めます。
ATFは一瞬で吸い込まれてラック側に流れます、ATFを補充し再度エンジンを掛けます、2〜3度やればほぼ充填できます。
エンジンを掛けた状態でハンドルを数回左右に目一杯切りエアー抜きをします。
パワステオイルポンプのリザーバーレベルを調整し各部の漏れを確認しラックブーツを被せて完了です。
最後は試運転走行して操舵力、フィーリング、走行安定性など異常の有無をチェックしてください。
シール類の写真を上げておきます。
左はインナースリーブの二重になっている外側のプラスチック製シールです、中央で斜めにカットしてあります。
右の写真はピストンの中央にあるテフロンシールです、このように斜めカットして入っていました。
新品は真っ白でしたがこのように灰色になっていました。
新しい物も同じ形状にカットして取り付けました。
左は油圧の掛かる部分のプラスチック製段付きシールで取り外した物です。
たったこれだけの物で最大80キロ近く上がる油圧をシールしています。
こちらの面が油圧を受ける面です、組み立て時には方向を間違えないようにしてください。
右は新品ですがこんなに傷を付けてしまいました(^^:、多分漏れるでしょう、新品と交換です。
失敗すると高く付きます(^^;